Gaze after somebody

 

自身の背中をリモートコードを用いて撮影したセルフポートレート。

刻々と進む人生の時間のたくさんの分岐点のうえにいる成仏できない幽霊のような自分を写真に収めることで、

それらの姿を見送ろうとした。

 

 

 

それらには名前はなかった。それらは現在の私たちの後ろにいて、

刻々と進む時間のたくさんの分岐点のうえで成仏できない幽霊のように ぼんやりと突っ立っている。

それらは、私たちが一歩一歩進むごとに体から抜け落ち、 感情と感情の起伏の間にふと落ちてしまった。

晴れた日を覆うような悲しみに沈んだ日や、曇り空に救われた日も、 記憶から抜け落ちてしまった。

なんでもないような日も。

ふと抜け落ちたままその地点で立ちすくんでいるそれらの時間たちを すくいとろうとしても、

過去に立ち返った途端、 いつもそれら過去の私はこちらを振り返って恐ろしい顔で こちらを振り向くような気がした。

とても怖い。 立ちすくんでしまう。足が震える。 私は、抜け落ちたそれらの過去たちの後ろ姿を、

写真でならまっすぐ見ることができるのではないかと思った。

写真を撮ることで、過去の自分の後ろ姿を見送る(gaze after somebody) ことが出来たようだった。