しらない街、東
2023.05.07
街の地面で、使い込んだ毛布で眠る人の指先を見つめる
乾いた本や、何かの紙切れを眠る前に読んでいた。
一緒に歩いていた人が、慣れた目でその景色をさっとさらって
何も言葉にしなかったこと、
段ボールから筒が出ている、
どうやらお金を入れるらしい
私はただそれを見つめることしかできなかった。
都会の10円の行方は、
それはどこに行くのだろうか?
さっきすれ違った知らない人の顔の骨格と、
地面で眠っている人の骨格を脳内で重ねても、
どちらがどちらに入れ替わったとしても
なにも不思議じゃなかった。
満員電車に乗った時に、生真面目そうな人が熱心に読んでいた
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ただたまたま乗る車両が違っただけで、
自分もこうだったかもしれないという線路と、
はたまた自分が
今どの線路の上にいるのだろうと思う。
ただ同じ地面にいるということ
信号待ち、向かいの道路で
大量の缶の袋を持った老女の押し車が
段差を上がれずに立ち往生していた、
信号待ちの軽トラから降りてきて助けた青いツナギのお兄さん
屋台ラーメンのおっちゃんが、細かい小銭を出した時に
満面の笑みで返してくれた言葉
方角だけの問題ではないけれど、
そういった風景が他の土地だから
コントラストが冴えて見えた。